バランスのとれた食生活は、体はもちろん、脳も元気にします。
「食べるもの」と「食べ方」によって
集中力が大きく変わってくるのです。

仕事がはかどる食事を選びたいね!
この記事では、集中力を高める栄養や食事、
そして集中力を長持ちさせる食事法について解説します。
集中力を高める栄養素
ブドウ糖:脳のエネルギー源
私たちの体にとって、エネルギー源となる栄養素には、
三大栄養素と呼ばれる「糖質・脂質・タンパク質」がありますが、
脳のエネルギー源になるのは(特別な場合を除いて)ただ一つ、「ブドウ糖」です。
ブドウ糖は、穀物や果物に多く含まれます。
(ぶどうから発見された為、日本語ではブドウ糖と呼びます。)
食べ物から糖質が摂取されると、消化吸収によりブドウ糖に分解され、
エネルギーとして利用されます。
ビタミンB群:ブドウ糖をエネルギーに変える
ビタミンB群は、吸収したブドウ糖を脳のエネルギーに変えるために必要な栄養素です。
ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、
パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸
単独では効果を発揮しにくく、お互い助け合って働くため、
ビタミンB「群」と呼ばれます。

不足すると集中力が低下しやすくなるため、
意識して摂取すると良いよ!
リジン:ブドウ糖をエネルギーに変える
私たちの体はタンパク質でできていますが、
体のタンパク質は20種類のアミノ酸でできています。
そのうち9種類の「必須アミノ酸」は、体内で作り出すことができないため、
食べ物から摂取する必要があります。
リジンは、ビタミンB群と同じく、
ブドウ糖をエネルギーにスムーズに変える働きがあり、
疲労回復や集中力アップに効果があると言われています。
カフェイン:目覚まし効果&集中力アップ
カフェインといえば、「コーヒーで眠気覚まし」というイメージが強いですが、
眠気覚ましといった興奮作用の他にも、
集中力を上げる効果もあります。
めまい、心拍数の増加、震え、吐き気といった
急性中毒を引き起こすことがあります。カフェインに対する感受性は個人差が大きく、
「一日○mgまで」といった摂取量は設定されていません。食品安全委員会によると、健康な成人の場合、
カフェインの摂取量の目安は「400mg/日(マグカップ約3杯分のコーヒー)まで」
とされていますが、
自分の体調を把握し、適度な量を心掛けましょう。
カフェインは、摂取後約30分で脳に到達します。

仮眠後すっきり目覚めたい場合は「仮眠前」
に、カフェインを摂取するのがおすすめだよ!
テアニン:リラックス効果&集中力維持
テアニンとは:緑茶に多く含まれるアミノ酸の一種。
緑茶の「旨味」や「甘み」は、このテアニンによる。
(ちなみに、緑茶の「渋み」は、カテキンという成分によるもの。)
テアニンには、ストレス低減やリラックス効果の他に、
集中力を高める効果もあることが分かっています。
「特定の数字が表示されたらボタンを押す」「特定の音が聞こえたらボタンを押す」
という試験を行ったところ、
テアニンを摂取した場合、「正しく」「素早く」反応できるようになりました。

落ち着いて作業に集中できるようになるのです。
水分:脳のパフォーマンスを高める
成人の体の55%~60%を水分が占めていて、
その中でも脳をはじめとした臓器では、80%が水分です。
脱水は、集中力の低下を引き起こすため、
こまめな水分補給は集中力の維持に必須です。
イギリスのイーストロンドン大学とウェストミンスター大学で行われた実験では、
「知的作業をする前に500mlの水を飲んだ人は、
飲まなかった人に比べて14%も反応時間が速くなった」
という結果になりました。
コーヒーやお茶でも水分は摂取できますが、
カフェインが含まれる飲料の場合、カフェインの利尿作用によって
尿として排出される水分量も増えてしまいます。
そのため、一日1.2Lは「水」を飲むのが良いと言われています。
夏や、通勤等で運動をする場合は、さらに多く摂取する必要があります。

水は、一気に飲むのではなく、
少なくとも6回程度に分けて、こまめに飲もう!
「喉が乾いた」と感じるタイミングでは、既に脱水が始まっています。
喉が渇いたと感じる前に、意識的に水分補給しましょう。
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集中力を高める食事
食事① バナナ(ブドウ糖)
果物には、ブドウ糖をはじめとする糖類が豊富に含まれています。
以下の表は、果実(生)の可食部100gあたりの
各成分の含有量(g)をまとめたものです。
日本食品標準成分表2020年度版(八訂)をもとに作成
ブドウ糖や果糖は「単糖」という種類で、糖の最小単位です。
一方でショ糖は「二糖」という種類で、単糖が2つくっついたものです。
ちなみにデンプンは「多糖」という、単糖がたくさんくっついたものです。
単糖は、これ以上分解されることが無いため、すぐに吸収されます。
一方で、二糖や多糖は、単糖まで分解されてから吸収されます。
バナナには、「二糖」であるショ糖や、
「多糖」であるデンプンも多く含まれているため、
食べるとすぐにエネルギーになるだけでなく、
持続的に脳にエネルギーを与えてくれるのです。
食事② ラムネ(ブドウ糖)
ラムネには、ブドウ糖を主原料としているものがたくさんあります。
ブドウ糖が含まれるラムネを机に常備することで、
こまめにエネルギーをチャージすることができます。
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食事③ 豚肉(ビタミンB1)
豚肉には、ビタミンB1が豊富に含まれています。
以下の表は、豚をはじめとした肉類の
可食部100gあたりのビタミンB1の含有量(g)です。
部位によっても大きく異なりますが、
「もも」で比べた場合、豚肉のビタミンB1含有量は
鶏肉の8.5倍、牛肉の15倍です。
その他、「あさり」や「しじみ」といった貝類も、ビタミンB1が豊富です。
食事④ 煮干し(リジン)
リジンは、煮干しや鰹節、チーズに多く含まれます。
日本食品標準成分表2020年度版(八訂)をもとに作成また、肉や魚からもたくさん摂取できます。
日本食品標準成分表2020年度版(八訂)をもとに作成
豊富に摂取できるね!
食事⑤ 緑茶(カフェイン+テアニン)
カフェインというと「コーヒー」のイメージが強いですが、
コーヒー以外にも、カフェインを含む飲料はあります。
緑茶を飲むことで、
目覚まし効果&集中力アップの「カフェイン」と、
リラックス効果&集中力維持の「テアニン」の
両方を同時に摂ることができます。
カフェインの過剰摂取にならないよう、飲み過ぎには気をつけましょう。
集中力を落とす食事法
ブドウ糖は、脳にとって欠かせない栄養素ですが、
一度に過剰に摂取すると、血液中にブドウ糖が余ってしまい、
血糖値が上がります。
血糖値を急上昇させてしまうと、その反動で血糖値が下がり、
眠くなったり集中力が落ちたり、イライラしたりします。
そのため、以下のような「血糖値を急上昇させる食事法」には要注意です。
①糖類や炭水化物を多く含む食事
例えば、昼食に白米やパンばかりでお腹を満たすような食事法は、血糖値を急上昇させます。
食事のバランスに気を付けましょう。
②ブドウ糖が吸収されやすい形で含まれている食品
例えばフルーツジュースや、糖分を多く含むエナジードリンクは、
空腹時に飲むと一気に血糖値が上がるため、
空腹時を避け、適量を心掛けましょう。
集中力を長持ちさせる食事法
食事法① 低GI値の食材を選ぶ
55以下=低GI、56~69=中GI、70以上=高GI、の3段階に分類されます。
「血糖値を急上昇させる食事」は、食後の集中力がもちません。
低GI食品を選ぶことで、血糖値の急激な上昇を抑え、
集中力を持続させることができます。
例えば主食のGI値は、
食パン・フランスパン(95)→ライ麦パン(55)
うどん(85)→そば(54)
と、種類の選び方次第で
高GI→低GIに変えることができます。
ちなみに、ラーメンのGI値は75、パスタは65です。
脳のエネルギー源にもなる、大切な主食。
玄米やライ麦パン、そばがおすすめです。
食事法② ベジタブルファースト
同じメニューであっても、
食べる順番によって、食後の集中力が変わってきます。
食物繊維は、糖の吸収を穏やかにする働きがあります。
食物繊維が豊富な「野菜」を最初に食べることで、
血糖値の上昇を抑えてくれます。
海藻や、きのこ類も食物繊維が豊富なので、
主食よりも先に食べましょう。
食物繊維を先に摂ることで、脳にエネルギーがゆっくりと供給され続け、
食後の集中力が長持ちします。
食事法③ よく噛む
ガムを5分間噛み、その後に音刺激を与えて、
「脳が音を認知する」(P300という脳の電気活動が現れる)までの時間や、
音の後に「指でボタンを押すまでの反応時間」を計るという実験の結果、
何もしなかった場合と比べて、ガムを噛んだ場合、
認知時間と反応時間の両方とも短縮されることが分かりました。
よく噛むことは、脳を活性化させ、集中力を上げてくれるのです。
まとめ
仕事に集中したい大人から、
勉強に集中したい子どもまで、
食事は脳を元気にする手軽な方法。
集中力アップに効果的な栄養素を意識し、
食べ方にも少し気をつけるだけで、
食後の集中力は変わります。
忙しいからといって、食事を抜くのはNGです。